カール・フォン・リンネ Carl von Linné(1707年5月23日~1778年1月10日、医学・植物学・分類学、スウェーデン)
ホモ属サピエンス種
私たち人間(ヒト)の学名は「ホモ・サピエンス」。黄色人種も白人も黒人も、すべて同じ「ホモ属サピエンス種」という名前の動物だ。
「属種」は姓と名の「二名法」
「属」「種」は人それぞれの姓名(名字と名前)のようなもので、属が姓(名字)、種が名(名前)にあたる。同じ姓(属)だとみんなが親戚関係であり、さらに名(種)まで一緒だとまったく同じ仲間と言える。
この姓と名のように、二つのラテン語を組み合わせて学名を表記する方法「二名法」を確立し、動植物を分類・整理したのが、スウェーデンの植物学者カール・フォン・リンネだった。
各国や地方で違う植物名
貧しい牧師の家庭に生まれたリンネは、庭仕事が好きだった父の影響を受けて子供のころから植物が大好きで、いろいろな草花や木々の名前を知っていた。ところが同じ植物でも、国内外や地方によって呼び名がさまざま違っていることに気がついた。
学校では植物採集に明け暮れ、博物学や数学にも興味をもった。リンネは「植物を集めるだけでは、名前だけが多くなる。似た植物は一つにまとめるなどして、何とか分類できないものか」と考えるようになった。
著書の中で動植物・鉱物などを分類
リンネはスウェーデンの名門ウプサラ大学などで医学を学び、1741年医学部教授、翌年植物園長となった。この間1735年には動物・植物・鉱物の3界について述べた『自然の体系』(英語初版)、2年後には『植物の属』(同)さらに1753年には『植物の種』(同)を著した。それぞれに新知見を入れて版を重ねるごとに、ヨーロッパ中で評判となった。
クジラを哺乳類、人間をホモ・サピエンスとして「霊長目」に
これらの著書の中で彼は、植物では花の雄しべや雌しべの数、形などを重視して、植物を24に分類した。動物は六つに分け、クジラをいち早く哺乳類に含めたほか、人間を「ホモ・サピエンス」として分類し、高等サル類と同じ「霊長目」という仲間に入れた。これには「サルと一緒なんてとんでもない」といった反対意見もあったというが、今では常識的に認められている。
ツバキやマツ、イチョウなども命名分類
リンネが学名を付けて分類したのは、当時世界各地から集められた植物約7700種。日本で普通に見られるツバキ(Camellia属)やイチョウ(Ginkgo属)、マツ(Pinus属)、ネズコ(Thuja属)、イチイ(Taxus属)、ヤマモモ(Myrica属)、ヤナギ(Salix属)などもリンネが命名者だ。
分類学の父
ほかにリンネは鉱物や病気、においなどの分類も試みている。近代科学の成立に大いに貢献したことから、彼は「分類学の父」とも称されている。