生理学

パブロフのイヌ 足音を聞いただけでよだれが…

パブロフ,イワン・ペトロビッチ(1849~1936年、生理学、ロシア帝国〈ソ連〉)

 落語に「風が吹くと、桶屋がもうかる」という話がある。一見すると無関係なことが次々とつながっていくおかしな話だ。似たようなことは、私たちの身の周りにもありそうだ。

たとえば「教科書を開くと、とたんに眠くなる」とか「昼食時間を知らせるチャイムが鳴ると、とたんに口の中によだれが出てくる」とか。その教科書と眠気、チャイムとよだれは、本来は関係がない。

 ところが、これらの無関係なことがつながる仕組みについて、気づいた人がいる。よだれの研究をしていたロシア帝国(旧ソ連)の軍医学校教授で生理学者、パブロフだ。

 パブロフは、イヌの口に装置を付けて、よだれの出方や唾液(だえき)腺の働きを調べていた。何回か実験を重ねているうちに、えさをやりに来る作業員の足音を聞くだけで、イヌがよだれを流すことを発見した。

 そこで彼は、楽器の演奏で使うメトロノームの音をイヌに聞かせながら、えさを食べさせるようにした。これを繰り返したところ、イヌはメトロノームの音を聞くだけでよだれを流すようになった。

 メトロノームの音で無意識のうちによだれを流すといった反応(あるいは反射は、生まれつきのものではなく、音を聞かせるといった刺激を習慣化する(条件づける)ことによって得られたものだ。このような反応を、パブロフは「条件反射」と名付けた。

 パブロフの条件反射の研究はその後の、人間の脳や精神活動についての研究にも影響を与えた。何よりも主観的な観察ではなく、客観的な動物実験の方法で脳の働きを調べた意義が大きかったのだ。

 パブロフは1904年、ロシア人として初めてのノーベル賞(医学生理学賞)を受賞した。