電気工学

初の本格的な電気機関車 開発のダイナモと電気モーターで 

ジーメンス, ヴェルナー・フォン(1816~1892年、電気工学、ドイツ)

 蒸気機関車が発明されたのは1814年。では「本格的な電気機関車が初めて走ったのは?」というと、それは1879年、ドイツのベルリンで開かれた勧業博覧会でのことだった。会場内わずか1周300メートルの距離だったが、電気機関車は6人乗りの客車3両を最高時速約13kmでけん引し走った。これが大好評で、開催4カ月間に約9万人を乗せたという。

 電気機関車の動力源は電気。その電気を作るための実用的な発電機(ダイナモ)の開発を1867年1月に発表したのが、ドイツ最大の総合電機メーカーのジーメンス社の創始者で、電気工学者のヴェルナー・フォン・ジーメンスだった。「ダイナモ」も彼が初めて使った用語だ。

 ダイナモの基本原理はマイケル・ファラデーが1831年に発見した「電磁誘導の法則」によるもので、導線を巻いたコイルを磁界の中で動かすと導線に電気が流れる仕組みを利用して、欧米の技術者がより実用的なダイナモの開発を競った。この中で一歩先んじたジーメンスだったが、電気機関車の実現のためにはもう一つ重要な発明(発見?)が必要だった。

 1873年のウイーン万博博覧会で、ベルギーの技術者が自作のダイナモを展示しようと準備していた。ところが助手が間違えて、ダイナモからの出力ケーブルを別の休ませていたダイナモにつないでしまった。それを知らずにダイナモを稼動させたら、とたんに休止中のダイナモが動き出し、回転軸が高速で回り出したのだ。その技術者は急きょ展示を変更し、約1.6㎞離れたダイナモを電動モーター役にして水をポンプアップし、小さな滝にして水を流して見せたという。

 このようにダイナモが電動モーターにもなる二役ぶりに着目したのがジーメンスだった。それまでも電池でモーターを動かす機関車を作った人はいたが、電池がなくなれば動かない。1879年の博覧会でジーメンスは、蒸気機関で動かしたダイナモからの電気を、2本のレールに加えた3番目のレール(第三軌条)で機関車の電気モーターに送り、走らせた。そればかりか、会場内の照明もそのダイナモの電力でまかなった。

 その電気機関車が「技術の世界に大革命を起こすだろう」とジーメンス自身が予言した通り、博覧会から2年後の1881年には、ドイツのフランクフルト~オッフェンバッハ間の約6㎞区間で、世界最初の電気鉄道が営業運転を開始した。その後は英国や米国、スイス、フランスなどで次々と電気鉄道が実用化された。

 日本で最初に電気機関車(電車ではない)が運転されたのは1912年、信越線の横川~軽井沢間だった。

 ジーメンスは他に1877年に電流を振動に変換するコイルを発明し、これが後にダイナミック型スピーカーとなった。さらに1880年には世界初の電気式エレベーターを開発するなど、ドイツにおける「電気工学の父」とも呼ばれている。