アンドレ=マリ・アンペール André-Marie Ampère(1775年1月20日~1836年6月10日、電磁気学・物理学・数学、フランス)
電流の単位アンペア(A)
電流の単位「アンペア」。これはフランスの物理学者で数学者のアンドレ=マリ・アンペールをたたえて付けられた。(ちなみに電圧の「ボルト」は、世界初めての電池を発明したイタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタ〈1745~1827年〉に由来)。
14歳までに『百科全書』20巻を読破
アンペールは幼少のころから勉強への意欲が強く、算数を学ぶ前から小石やインゲン豆などを使って複雑な計算をした。さらに14歳までに『百科全書』20巻を読破し、18歳の時には当時の数学の研究成果を学び終えていたという。
電線のそばでコンパスの針が振れる!?
29歳でリヨン大学の数学教授になっていたアンペールは1820年9月、デンマークの科学者が「電線のそばでは方位磁針(コンパス)が振れる現象」を見つけたことを知った。さっそく自分でも実験をしてみた。
すると、並行した2本の電線の、それぞれ同じ方向に電気を流したときは2本の電線は互いに「引きあい」、互いに違った方向に流したときは「反発しあう」ことを観測した。
「アンペールの法則」
さらに発見したのが「電気が流れる導線の周囲には磁場が発生する」という電流と磁場と関係だ。その発生する磁場の方向は、右の握りこぶしの親指(あるいは右ネジの先端)を電流の方向に合わせたときに、他の4指が示す方向(右ネジを回す方向)に一致するというもの(「右手の法則」あるいは「右ネジの法則」)で、その後「アンペールの法則」と呼ばれるようになった。これらはいずれも、実験を始めてわずか1週間後の発見だった。
性格は‟おっちょこちょい”
いろいろと研究熱心なアンペールだったが、熱心さのあまり、少し「おっちょこちょい」の面もあったようだ。
捨てた自分の時計
小さいころから天才と称されたアンペールは、登校の途中、小石を使って計算に夢中になってしまった。ふと持っていた時計を見ると、遅刻寸前だったので、あわてて小石を川に捨てて駆け出した。学校に着いてみると、捨てたのは自分の時計だった。
タイトル、署名のない教科書出版
大学での自分の講義に夢中になるとハンカチで黒板を拭いたり、雑巾で顔を拭いたりした。自分の数学の講義のために書いた教科書には、タイトルも自分の署名も付けないで出版してしまったという。
自分で掲げた「不在札」なのに…
さらにある時、自宅で考えごとをしている最中に来客が多いことに困ったアンペールは、妙案を思い付いた。家の門前に「不在」と書いた札を掲げたのだ。初めはうまくいったが、そのうちに自分も忘れてしまった。考え込みながら自宅に帰ってきて、札の文字を読んだ。「不在ならしょうがない。また来よう」と、引き返してしまったそうだ。
〈メモ〉熱中するとほかのことを忘れてしまうのは、あのニュートン(1643~1727年)も同じだった。ある時、家政婦にゆで卵を作るのを頼まれ、砂時計を渡された。家政婦が戻ってみると何と、ニュートンが手に持っていたのは卵だった。鍋の中に、砂時計があったという。