アルフレッド・ロータル・ウェゲナー Alfred Lothar Wegener
(1880年11月1日~1930年11月2日、気象学・地球物理学、ドイツ)
世界地図を眺めていて、アフリカ西部の海岸線と南アメリカ東部の海岸線が、ともにピタリと合致することに気がついた。
「もとは一大陸」地質学会で発表(1912年)
「もとは一つだった大陸が、互いに分かれたのではないか」。そう考えたのがドイツの気象学者、アルフレッド・ウェゲナーだった。彼は壮大な地球規模での考えをまとめ、1912年にフランクフルトで開かれたドイツ地質学会で初めて「大陸移動説」を発表した。
気象学者の「大陸移動説」に大批判
さらに1915年には著書『大陸と海洋の起源』を発刊し、約2億5200万年前から約6600万年前までの中生代には大西洋がなく、その後一つの大陸から分離して、現在の地球上の各大陸ができたとする「大陸移動説」を改めて展開した。
ところが「そんなバカな。大陸が移動するなんて」「専門外の気象学者が、何を言うか」と、地質学者らを中心に、多くの学者たちはまったく認めようとしなかった。
「新聞紙は裂かれても、記事はつながるはず」
ウェゲナーは単なる思いつきで、地球上の大陸がジグソーパズルのように組み合わさることを述べたのではない。逆に「いくつかに引き裂かれた新聞紙が、元は同じ一枚の紙だったことを示すためには、書いてある新聞記事もつながらなければならない」と、自説を裏付けるいろいろな証拠を集めた。
山脈の地質、氷河の痕跡、古生物の分布…
ヨーロッパ大陸と北アメリカの山脈が、ともに同じ地質構造をして、互いにつながることが分かった。さらに南アメリカとアフリカ大陸、オーストラリア大陸、インド亜大陸、マダガスカル島にも同じ氷河の痕跡が残っていること。ほかに各大陸の古い植物や生物、気候などの分布からも、昔は一つの大陸だったと考える方がよく説明できたのだ。
しかし残念なことにウェゲナーは、何がそうした大陸を動かす力=原動力となったのかを仮説として説明できないまま、グリーンランドを探検中に遭難死してしまった。
地磁気学、海洋地質学からの新たな裏付け
ところが1950年代になって「大陸移動説」は息を吹き返した。
各大陸に残る大昔の岩石に残る地磁気を調べたら、各地のNS極の方向がバラバラだったが、大陸を一つに合わせることで地磁気の方向が見事に一致することが分かった。さらに海洋地質学の研究成果から、海洋底も大規模に移動していることなどが明らかとなり、改めてウェゲナーの学説が見直されたのだ。
「プレート・テクトニクス理論」へ
今や「大陸移動説」は、地球の表面がいくつかの岩板(プレート)に分かれて移動し、これが地震を引き起こすといった「プレート・テクトニクス理論」などにも発展している。ちょっとしたジグソーパズルのような発想が、大きな科学の理論につながった。
