数学

円周率πを自著で採用 18世紀の数学界の巨匠

オイラー, レオンハルト(1707~1783年、数学・天文学、スイス)

 「三医師、異国に向かう。サンゴ役なく、ミニみやしろに、虫さんざん闇に鳴く」──何のことかというと、実は、円周率3.14 159265 358979 3238462 643383279……の覚え方の一例だ。

 円周率とは、円の直径に対する円周の長さの比のこと。どんな大きさの円でも一定で、その値は小数点以下に無限に続く。数学では円周率をギリシャ文字の「π(パイ)」で表している。ギリシャ語で「外周」を意味する( περιφέρεια :ペリペレイア)の頭文字から取ったと言われる。

 円周率を最初にπで表した人は、英国の天文学者ハレーや物理学者ニュートンとも親しかった数学者のウィリアム・ジョーンズ(1675~1749年)で、1706年に出版した著書『新・数学入門』に記している。それが広く一般に使われ出したのは約30年後、スイス生まれの天才数学者レオンハルト・オイラーが、1737年に出版した自著『無限級数に関するさまざまな考察』で改めて採用してからのことらしい。

 オイラーは驚異的な暗算力の持ち主で、数学に対する集中力もすごかったという。ほかに地球と月や太陽の間の引力など、天文学にも興味をもち、23歳でロシア・ペテルスブルクの科学アカデミーの物理学教授、26歳で数学教授になった。

 ところが31歳のころに太陽の観測で右目の視力を失い、64歳のときには左目も白内障のために失明した。しかし失望することなく「これで数学に集中できる」と語ったとか。性格も陽気でユーモアもあったオイラーは、自分の子をひざに、猫を背に乗せながら、紙に計算をしていた。失明後は同僚の教授たちに論文を読んでもらい、口述筆記をするなどして、76歳で亡くなるその日までおう盛な研究活動を続け、生涯で全886編もの実に多くの論文を残したという。

 「オイラーの公式」や「オイラーの係数」「オイラーの積分」「オイラーの関数」「オイラーの運動方程式」などと、18世紀に大活躍したオイラー。19世紀最大の数学者ガウスと並ぶ、数学界の巨匠の一人とされる。

〈メモ〉円周率の値:紀元前1550年ころのエジプトでは円周率の近似値として3.1605がパピルスに記録されているという。古代ギリシャのアルキメデスは円に内接・外接する正九十六角形の面積を求め、円周率の値が3.140と3.142の間にあることを示した。

 近年はスーパーコンピューターを使い、円周率の小数点以下の、かなりの桁まで求められている。

 2019年3月14日(「円周率の日」)にはGoogle社の技術者、岩尾エマはるかさんがGoogle Cloudを用いて、円周率の値(3.1415926535897)に合わせて小数点以下31兆4159億2653万5897桁まで計算したと発表。その後2021年8月16日に、スイスのグラウビュンデン応用科学大学がスーパーコンピューターで62兆8318億5307万1796桁まで計算し世界記録を更新したと発表した。

 これほど膨大な桁数の円周率をπの一文字で表した先人たちは、やはり偉かった。