野口 英世(1876〈明治9〉年~1928〈昭和3〉年、医学・細菌学、日本)
「これは、まるでオレではないか」。野口清作(せいさく)は驚いた。
小説家、坪内逍遥(つぼうち・しょうよう)が書いた『当世書生気質(とうせいしょせいかたぎ)』を知人から勧められ、読んでみたのだ。
この小説は、上野戦争で生き別れた兄妹の再会の話を中心に、当時の書生(学生)の生活や遊び、精神などを写実した全20話の作品だ。この第6話に出てくるのが「野々口精作」(ののぐち・せいさく)という22、3歳の医学生。この男は口が巧みで外面(そとづら)の良い偽善者で、人から借金を重ねては放蕩(ほうとう)を繰り返すという自堕落な性格だった。
小説が書かれたのは1885-6年だから、野口がわずか9歳のころのフィクションであり、登場人物の名前も性格も似ているといっても、後で坪内も語っているように「それはまったくの偶然」だった。
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