天文学

‟宇宙の膨張”発見 銀河スペクトルの「赤方偏移」観測で

ハッブル,エドウィン・パウエル(1889~1953年、天文学、米国)

 1990年4月にスペースシャトルで打ち上げられ、地上約600㎞の軌道を周回しながら、30年余りにわたり宇宙のさまざまな姿を撮影し続ける「ハッブル宇宙望遠鏡」。長さ13.1mの筒型本体に口径2.4m反射望遠鏡を収めるこの観測機器の名前は、米国の天文学者エドウィン・ハッブルにちなんだものだ。

 ハッブルは、米ミズーリ州の保険会社役員の家に生まれた。小さい頃からスポーツが得意で、高校時代にはハンマー投げや棒高跳び、走り高跳びなどのフィールド競技で活躍した。シカゴ大学ではボクシング部で体を鍛え、勉学では数学と天文学を学んだ。卒業後は、英国オックスフォード大学の奨学生となり法学の修士号を取得した。

 1913年に帰国して弁護士となったが、好きな天文学から離れられず、1914年からシカゴ大学のヤーキス天文台(ウィスコンシン州)に勤務し、1917年に博士号を取得した。第一次世界大戦(1914~1918年)のためフランスに従軍したが、1919年からカリフォルニア州のウィルソン山天文台の職員となり生涯勤めた。

 ハッブルは1923~24年に、ウィルソン山天文台の当時世界最大級の100インチ(口径(2.54m)望遠鏡を使い、渦巻き星雲の典型とされる「アンドロメダ星雲」(M31)が、実は、私たちの地球や太陽系が属する銀河系(天の川銀河)とは別の、はるか遠くにある銀河(アンドロメダ銀河)であることを突き止めた。これをきっかけに、これまでの「星雲」が「銀河」に変更されるなどして、宇宙全体には1000億個もの銀河があると推計された。ハッブルは1926年に銀河の形態分類法「ハッブル分類」も提案した。

 さらにハッブルは、さまざまな銀河までの距離とその銀河のスペクトルを調べた。その結果、ほとんどの銀河のスペクトルに「赤方偏移」が見られ、それによって「より遠方にある銀河ほど、近くの銀河よりも速いスピードで遠ざかり、そのスピードはその銀河までの距離に比例する」という「ハッブルの法則」を発見し、1929年に発表した。

 この発見は、天文学界に大きな衝撃を与えた。というのも、遠くの銀河がどんどん離れている事実は、宇宙そのものが膨張していることを意味するからだ。これはまさに、アインシュタインの「一般相対性理論」から導かれた「膨張宇宙モデル」に一致するもので、後に、宇宙創成時の爆発的膨張についてのビッグバン理論にもつながった。

 また、この法則の比例定数(ハッブル定数)の逆数は「宇宙の年齢」、すなわち宇宙が膨張を始めてから現在までの時間を示している。ところが当時、ハッブルが求めた数値によって「18億年」という「あまりに若すぎる年齢」が得られたために、天文学界での議論が沸騰した。結局、銀河までの距離を過小に見積もったことによる若年齢だとして、その後修正され、ハッブル定数による宇宙年齢(ハッブル時間)は約 140億年とされている。

 〈メモ〉当初の10年程度の設計寿命をはるかに経過しているハッブル宇宙望遠鏡の後継機として「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」 (JWST) が2021年12月25日、中米フランス領ギアナにある欧州宇宙機関(ESA)ギアナ宇宙センターからアリアン5ロケットで打ち上げられた。主鏡は六角形の鏡18枚からなる口径約6.5m反射望遠鏡で、赤外線領域を中心に観測する。地球の低高度の周回軌道では太陽や地球、月からの熱の影響を受けるため、地球から約150万km離れ、太陽からも隠れる「太陽-地球系のラグランジュ点L2」に置かれて観測する。2022年1月24日に目標の観測点に到着し、同年夏に観測を開始する。