化学

放射能の研究で 夫婦そろってノーベル賞

キュリー, マリ(1867~1934年、物理・化学 ポーランド)、ピエール(1859~1906年、物理・化学 フランス)

 フランスで1992年に、新しい500フラン(約1万円)紙幣が登場した。描かれているのがラジウムなどの放射能の研究でノーベル賞を受賞したキュリー夫妻(マリとピエール)だ。

実は、2人を紙幣にという構想はその20年前にも検討されたが、マリがポーランド人であることで、当時のフランス大統領が反対したのだという。

 マリは子供のころから抜群の記憶力で、勉強もよくできた。ところが家が貧乏だったため、働いて学資を貯めて24歳でパリ大学に入り、さらに苦労を重ねてやっと物理学の学士資格を得た。そして卒業後に、パリの工業物理化学学校の実験主任をしていたピエールと結婚し、二人三脚での地道な研究生活が始まった。

 着目したのが、物質が出す謎の光線だった。当時、ウラン物質から強い光線が出ていることは、フランス人のアントワーヌ・ベクレルが見つけていたが、夫妻は新たにトリウムも「放射線」を出すことを発見し、さらにウランを取り除いた廃石の中にも、ウラン以上に強い放射線を放つ2種類の物質が含まれることを突き止めた。

 物質の一つが祖国ポーランドから名づけた「ポロニウム」、もう一つが「放射能をもった元素」の意味での「ラジウム」だった。

 しかし、発見した物質をものとして取り出さなければ、人々を納得させることも、その物質の性質も明らかすることはできない。

 そのため夫妻は来る日も来る日も廃石をすりつぶし、硫酸で処理するなどの作業を繰り返して、ようやく4年がかりで、約8トンの廃石からわずか0.1グラムの微量な塩化ラジウムの抽出に成功した。

 その業績で夫妻は1903年に、ベクレルとともにノーベル物理学賞を受賞した。3年後にピエールは馬車にひかれて死んでしまったが、マリは夫の遺志を継いでさらに研究を続け、純粋ラジウムの抽出などの業績を上げて1911年には再びノーベル化学賞を受賞した。

 こうして放射能の研究に尽くしたマリだったが、白血病で亡くなった。長年、放射線を浴び続けたのが原因だったと言われている。

〈メモ〉欧州共通通貨ユーロが1999年1月1日から導入され、それまでのフランスの通貨フランは2002年1月1日から廃止された。これに伴い、キュリー夫妻の500フラン紙幣なども2012年2月17日をもってユーロとの交換が停止され、ついに生活の場から消した。