物理学

特殊相対性理論の基礎に?「光速度不変の原理」発見

マイケルソン,アルバート(1852~1931年、物理学、米国)

 真空中での光の速さは秒速約30万㎞(より詳しくは29万9792.458㎞/秒)だ。地球1周の長さは約4万㎞なので「光は1秒間に地球を約7周半する速さだ」とも例えられる。

 光の速度を最初に求めた人はオーレ・レーマーというデンマークの数学者で、1676年のこと。いつも一定であるべき、木星の衛星イオが木星に隠れる周期が、地球が木星に近づいている時と遠ざかっている時とでは観測時間が違うことを利用し、光の秒速はおよそ21.3万㎞と計算した。今の数値とはだいぶ誤差があるが、光の速度が有限であることを初めて数値で示した意義は高いという。

 19世紀になり、いろいろな人が実験装置を使って光の速度を測定するようになった。その一人が、米海軍兵学校卒の海軍士官ながら光に興味を持ち、後に大学教授となったドイツ生まれの米国の物理学者アルバート・マイケルソンだった。

 マイケルソンは先人たちの実験装置に工夫を加え、さらに改良を重ねるなどして、かなり精度のよい光速の測定に取り組んだ。それどころか、光速測定のために発明した装置「マイケルソンの干渉計」で、とんでもないことを発見してしまったのだ。

 「干渉計」というのは、光の「波」の性質から現れるしま模様を利用して、光の波長のずれや到達時間の差などを求める装置だ。一つの光源から発せられた光を、45度の角度に置かれたハーフミラーの表面で直角方向に反射させ、その先の鏡で反射させて戻ってきた光と、そのままハーフミラーを透過して反射鏡で反射して再び戻ってきた光を重ね合わせることでしま模様を検出する。

 マイケルソンが光の測定実験に取り組んでいた時代は、光を伝える物質として「エーテル」の存在が信じられ、宇宙はエーテルが満ちているものと考えられていた。その中を地球が自転しながら太陽を公転しているわけだから、地球には常に「エーテルの風」が吹いている。そのため、光の速度をいつの季節や時刻に、地球上のどこで測ろうが、その数値には必ず「エーテルの風」の影響が現れるはずだ。

 その「エーテルの風」の速度を精密に測るために、マイケルソンが1887年に干渉計を使って実験を行った。が、光の速度はどこで、どの方向に変えて、何度やっても変わらない。結局は「エーテルの風」もエーテルの存在自体も否定さることとなったが、逆に「観測者がどこにいて、どんな方向に動いていても、光の速度は不変であること」が分かったのだ。

 この実験は共同研究者エドワード・モーリーの名前とともに「マイケルソン・モーリーの実験」と呼ばれ、物理学史における重要な実験の一つとなった。期せずして見出された「光速度不変の原理」は、アインシュタインの特殊相対性理論の基礎となったといわれる。これらの業績でマイケルソンは1907年、米国人では最初の科学部門のノーベル賞(物理学)を受賞した。

〈メモ〉マイケルソン干渉計の原理は、世界で初めて2016年に重力波を検出したLIGOや、岐阜県・神岡鉱山跡に建設されたKAGRAなどの重力波の検出装置、さらには眼科学の眼底検査装置などに応用されている。