化学

ヘビの夢見て 炭素原子の「カメの甲」構造を発見

ケクレ,フリードリヒ・アウグスト(1829~1896年、化学、ドイツ)

 「夢を見よう。そうすれば、真理が見つかる」。──何のこと? どこかのCM? と思うかもしれない。が、そう語ったのはドイツの有機化学者フリードリヒ・アウグスト・ケクレだ。彼は夢を見て、重大な発見をした。

 炭素原子は他の原子と結び付くために〝4本の手"をもっている。このことをケクレは突き止めていた。そして、よりいっそう彼の頭を悩ませていたのは「もっと多数の炭素原子からなる化合物では、どのように炭素原子は結合しているのか」ということだった。

 大学教授のケクレはある時、部屋で化学の教科書の原稿を書いていたが、なかなか考えがまとまらない。そこでストーブの近くに椅子を移動して、さらに考えているうちに、つい、うとうと眠り込んでしまった。

 その夢の中に、多くの炭素原子が出てきた。そのうち炭素原子は互いにからみ合って、1匹のヘビになった。そしてヘビは、自分で自分のしっぽにかみつきながら、輪のようにぐるぐる回り出した。そこでケクレはハッと、目が覚めたという。

 ケクレが我に返って思いついたのが、6個の炭素原子が輪のように連なった「ベンゼン構造」だった。それまでだれも考えつかなかった六角形の「亀の甲」構造の発見によって、すべての有機化合物の基本構造が明らかとなり、さらに多くの化合物が合成されるようになった。

 「夢が発見のヒントになった」といっても、ケクレはいつも寝ていたわけではない。それどころか彼の睡眠時間は毎日3、4時間くらいで、ひと晩ほどの徹夜は平気だった。2晩や3晩の徹夜をしてこそ「初めて勉強した気分になった」というから、大変な勉強家だったようだ。

 ただし学生の授業中の居眠りについて、寛容だったかどうかは、定かではない。


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