化学

ガスバーナーの炎色で新元素発見 分光分析法の基礎築く

ブンゼン,ロベルト・ウィルヘルム(1811~1899年、化学、ドイツ)

 理科の実験でよく使われているガスバーナー。空気の調節を間違えて、いきなりボッと燃えて驚いた経験をもつ人が、読者の中にもいるかもね。実は、そうしたガスバーナーや家庭用ガスコンロなどの原型を発明したのはロベルト・ウィルヘルム・ブンゼンというドイツの化学者だ。そのため「ブンゼン・バーナー」とも呼ばれる。

 同バーナーは、炎の温度が1870℃にも達するような高温で効率よくガスを燃やすことができる優れものだ。ブンゼンは、そのバーナーでいろいろな物質を燃やし、その炎の色から物質の元素を分析する方法を研究していた。これは「炎色反応」と呼ばれる現象で、例えばナトリウムを燃やすと炎の色は黄色、スズや鉛は淡青色などと、観察できる。

 ブンゼンの実験を見て「炎で発色した光をプリズムで分光し、出現した炎光スペクトルを調べたらどうだろう」と提案したのがプロイセン(現ロシア)生まれの物理学者で、ブンゼンと同じハイデルベルク大学教授のグスタフ・キルヒホフ(1824~1887年)だった。さっそく二人で研究を開始し、炎光スペクトルを小型の顕微鏡で観察する仕組みの「分光器」を世界で初めて作った。

 「分光器」を用いると、たとえ試料が微量でも、あるいは他の物質と混じり合っていても、同じ元素は必ず、炎光スペクトルの同じ波長のところに「輝線」として現れることが分かった。二人はこの方法を利用して、リチウムが海水や花崗岩などに含まれることを明らかにしたほか、1860年にはセシウム(ラテン語の〈空色)にちなんで命名)、翌年にルビジウム(同じく〈暗赤色〉にちなむ)をそれぞれ鉱泉と雲母から発見した。

 また、キルヒホッフは1860年に独自の研究で、分光した太陽光のスペクトルを分析することにより、地球にいながらにして、太陽を構成している元素を分析できることを証明した。

 こうして分光分析法の基礎を築いたブンゼンだったが、それ以前はヒ素化合物の研究に熱中していた。ところが実験中の爆発事故で右目を失明し、さらにヒ素の毒性によって命まで失いかけたことから、その研究を止めてしまったこともあった。

 ブンゼンはハイデルベルク大学の化学教授を、1852年から1889年に引退するまで37年間務めた。化学の研究と教育に熱心で、その優しい人柄から学生や市民たちにも慕われていたという。再びの実験中に事故が起きて「残りの左目も失明か」とうわさが流れた時は、多くの市民が心配して大学の研究室まで詰めかけたとも言われる。