物理学

油圧システムの基となる圧力原理を発見 ‟人間は考える葦だ”とも

パスカル,ブレーズ(1623~1662年、数学・物理学・哲学、フランス)

 天気予報などに出てくる「ヘクト・パスカル」という気圧の単位は、フランスの数学者かつ物理学者で、哲学者でもあったブレーズ・パスカルの名前にちなんだものだ。

 早熟の天才パスカルは、家庭で英才教育を受けた。父親に「数学の勉強は頭を使い過ぎる」と禁止されていたが、かげに隠れて勉強し、12歳のころには「三角形の内角の和はつねに180度になる」などの、ユークリッド幾何学のいくつかの定理を自分で導き出していた。さらに17歳のころに円すいに関する「パスカルの定理」を発見し、19歳までには世界最初の機械式計算機を発明したという。

 数学以外の分野で有名にしたのが物理学の「パスカルの原理」の発見だ。これは「密封した容器の中の流体の一部に圧力をかけると、容器の形状に関係なく、流体のどの部分にも等しくその圧力が伝わる」というもので、この原理によって「小さな力を大きな力に変える水圧機」を考え出した。それが今では各種の油圧システムに応用され、プレス機やクレーン、自動車、飛行機など、さまざまな機器で活用されている。

 そうした圧力の研究にパスカルの興味を向かわせたのが、1643年にイタリアのガリレオ・ガリレイの弟子で物理学者のエヴァンジェリスタ・トリチェリ(1608~1647年)が行った実験だった。

 その実験(トリチェリの実験)は、一端を閉じた長さ約1mガラス管に水銀を満たし、水銀を入れた平たい容器の中で逆さに立てると、ガラス管の水銀は高さ約76cmまで下がり、閉じたガラス管の上端に真空のすき間(トリチェリの真空)ができた。これは高さ76cmの水銀の重さと大気の圧力(気圧)が、ちょうど釣り合ったからだと考えられた。

 それでは「高い山に登るほど気圧が小さくなるので、水銀の高さもより低くなるはずだ」。実験を知ったパスカルはこう仮説をたて、実際に装置を義兄に山に運んでもらい実証した。自分で登らなかったのは、小さいころから病弱だったからだ。

 やがて宗教問題に直面したパスカルは、人間の理性について考えるようになった。

 「人間は1本の葦(あし)であり、自然界で最も弱い存在である。しかしそれは考える葦である。たとえ宇宙が押しつぶそうとも、人間は宇宙よりもはるかに尊い。われわれの尊厳のすべては考えることにある」

 39歳の若さで亡くなった彼の遺稿集『パンセ』の中の一節(意訳)だ。