化学

「酸素」発見の化学者牧師 炭酸水を発明、光合成も観察

ジョセフ・プリーストリー Joseph Priestley(1733年3月23日~1804年2月6日、化学、英国)

酸素を発見した人 

 私たち、地球上のほとんどの動植物は酸素がないと生きて行けない。物が燃えるにも酸素は必要だ。特に近年は新型コロナ禍で、医療の面からも十分な酸素の供給が重要視されている。でもそもそも、最初に酸素を発見した人はだれなのか?

牧師ながら科学に興味 

 ジョセフ・プリーストリーというイギリスの牧師がその人。だが、普通の牧師さんとはちょっと違った。本業の宗教だけでなく科学にも興味を持ち、自分で実験装置を工夫するなどして、塩化水素やアンモニア、一酸化窒素、亜硫酸ガスなど十種類以上の気体を次々と発見した。

十種類以上の気体を発見 炭酸水も発明 

 さらに今では多くの種類のソーダ水やコーラなどの炭酸飲料があるが、実は炭酸水も、プリーストリーの発明だ。1769年に、たまたま隣りに住んでいたビール醸造所で出た二酸化炭素(炭酸ガス)を装置で集めて水に溶かしたところ、とてもさわやかな飲み物となった。これを友人らに提供したら、たちまち庶民に広まったという。

火が燃え、長生きできる、よい「気体」 

 さて酸素のこと。プリーストリーは1774年8月に実験を行い、酸化水銀を大きなレンズで集めた太陽光で熱し、出てきた「気体」をためた容器の中でロウソクを燃やしたら、激しく燃えた。さらに「気体」の容器にハツカネズミを閉じ込めて飼育したら、普通に空気の中で育てたときの2倍も長く生存した。自分でも「気体」を吸ってみたら「非常によい空気だ」と確認した。

「脱フロギストン空気だ」

 ところがプリーストリーは、この「気体」が今にいう「酸素」とは気が付かなかった。当時は一般的に「物が燃えるのは、物からフロギストン(燃素)という物質がはげしく飛び出してくる現象だ」と思われていた。そのためプリーストリーも「物が燃える原因はこの気体にはない。この気体は脱フロギストン空気だ」と間違って考えてしまった。

ラボアジェが「酸素」と命名 

 この実験のことを、彼は旅行で訪れたフランスの化学者アントワーヌ・ラボアジェにも話した。ラボアジェはさらに実験を重ねて、この「気体」が何かの元素であることをつかんだ。この中で物を燃やすと必ず「酸」(oxys:オキシス)ができることから「酸の素」つまり「酸素」(oxygene:オキシジェン)と名付けた。

本当は「酸」の素は「水素」 

 だがこのとき、ラボアジェも間違えた。「酸」ができるために必要なのは「酸素」ではなく、実は「水素」なのだ。

木枝や葉緑体からの酸素を観察

 プリーストリーは最後まで「フロギストン説」を信じていたが、生物の呼吸には空気が必要なことを説いていた。またビンに入れたハッカの枝や水槽の内側に付いた「緑色のもの」(葉緑体か?)から、酸素が出ていることも観察したという。このことから、プリーストリーは植物の光合成を初めて発見した人ともなった。

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