物理学

独学で実験科学者に 電磁誘導や電気分解の法則発見

ファラデー,マイケル(1791~1867年、化学・物理学、英国)

 現在の電気モーターや発電機、変圧器といった電動技術の基礎を築いたのは、英国の化学者で物理学者のマイケル・ファラデーだ。

 「天才的な実験科学者」と称されるファラデーは電気の実験に没頭し、とことんまで結果を追究した。

 1820年にデンマークの物理学者エルステッド(1777~1851年)が、電流を流した針金のそばに磁針(コンパス)を置くと磁針が大きく揺れる現象を発見した。すると西洋各国で電気と磁気や磁場に関する研究が盛んになり、フランスの物理学者アンペールは電流の方向と直角になるように磁場が発生すること、同じくフランスの物理学者で天文学者のドミニク・フランソワ・アラゴ(1786~1853年)らは、電流を流したコイルの中に鉄の棒を置くと,それが磁石に変わる現象を発見した。

 これらの発見に対しファラデーは、一つ一つ注意深く追試を繰り返した。そして「電気が流れる針金の周囲に磁場が生じるならば、逆に、磁場によって電気がつくれるのでは?」と思いつき、1824年12月のある日、磁石に針金を巻いて電流の発生を期待して実験したが、成功しなかった。

 ファラデーはそれまでの電気の検流器を改良し感度をより高めるなどして、1825年11月に再び実験した。今度は針金の環を2本用意し、互いに環の面が向き合うように近づけて立てた。1本の環に電流を流して磁場を発生させ、もう1本の環に検流器を取り付けて電流の発生を調べたが、うまくいかなかった。

 そしてついに、磁場による「誘導電流」を初めて発見したのは1831年8月29日だった。ファラデーは一つの鉄の環に2組のコイルを巻き、一方を電池に、他方を検流器につないで、電流が発生するかどうか調べた。そして、この実験を何度か繰り返すうちに、コイルに電池を接続するときや接続を切るときだけ、一方のコイルの検流器の磁針が瞬間的に振れることに気がついた。

 「磁場が変化すれば誘導電気が起きる」。そう考えたファラデーは、この誘導電流がコイルに電流が定常的に流れている間は生じないことを確認した。さらに同年10月7日の実験で、コイルに磁石を近づけたり離したりするだけでコイルに電流が流れることを確認し、電磁気学の基礎となる重要な「電磁誘導」現象を発見した。これを応用したのが電気モーターや発電機などだ。

 ファラデーはほかに、電解質の溶液における「電気分解の法則」も1833年に発見した。その陽極や陰極に引かれる正・負の電気を帯びた原子に、ギリシャ語で「行く」という意味の「イオン」という名前を付けたのもファラデーだった。

 貧しい鍛治屋に生まれたファラデーは、小学校にはほとんど通わず、製本屋で働きながら科学の本を読んで勉強した。20歳のときに英国の化学者ハンフリー・デービー(1778~1829年)の知己(ちき)を得て、1813年3月に王立研究所の化学助手、1825年に同研究所の実験主任になった。

 ファラデーは、王立研究所が1825年からクリスマスのシーズンに子供たちのために開いている科学講演会(クリスマス・レクチャー)にも参加し、1827年から1860年までに計19回講師を務めた。この最後の1860年の連続講演の内容が『ロウソクの科学』(原題は「ロウソクの化学史」)という本にまとめられている。